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海の日に海神別荘
2009年07月20日

私は美しいものが好きです。まぁ、美しいものが好きじゃない人なんていないと思いますが。

「じゃあ美しいものって何?」と聞かれると、自分なりの価値観を説明するのに3時間ぐらいかかってしまいそうなのですが、とりあえず泉鏡花の世界観はかなりそこに近いものかと思われます。独特すぎる言葉遣いとかも含めて。

※泉鏡花って誰よ? ナニよ? という方は、google先生か何かで調べてみて下さい。一言で言うと、中二病で潔癖症な明治時代のおっちゃんです。お刺身を茹でて食べたとか。←すでに刺身じゃないよそれ。

今日は海の日ですね。海の日に「海神別荘」という海の底の美しい物語の話をします。歌舞伎などで何度か舞台になったこともあるので(というか元々が戯曲なので)ご存知の方も多いかと。
文学作品に限って言えば、SMという心理状態(行為じゃなくて)に興味を持つに際して、ひとつのきっかけとなった作品かもしれない。(あと中勘助の「犬」は双璧)

あらすじをかいつまんで申しますと、まず、海辺に父ちゃんと娘が二人で住んでいます。で、この娘がごっつい美人なんで、海底に住む海神が惚れてしまうんですね。そこで海神は父ちゃんに金銀財宝を渡して娘を嫁に貰うことにするのですが、娘がいつまでたってもイヤがるので(いいじゃんイケメンだし金もあるよ!)、海神はいい加減キレて娘を殺そうとするんです。でも、斬られそうになった瞬間に、娘、まさかなぜかの心変わりで、自分も海神に惚れてしまって大団円という。

長くなるので以下は畳んでおきます。ちゃんとSMにつながりますっていうかつなげます。
かいつまみすぎて5行で終わりましたが(笑)、原作では4行目までがひたすらグダグダ続いており(グダグダって言うな)、娘がいかに地上に帰りたいかがしつこいぐらいに描写されています。
なのに、残り1行、クライマックスの海神が娘に斬りかかる場面なんてたったこれだけ。

公子: 美しい女だ。花をむしるも同じ事よ、花片(はなびら)と蕊(しべ)と、ばらばらに分れるばかりだ。あとは手箱に蔵(しま)っておこう。殺せ。
美女:貴方、こんな悪魚の牙(きば)は可厭(いや)です。御卑怯(おひきょう)な。見ていないで、御自分でお殺しなさいまし。
 (公子、頷(うなず)き、無言にてつかつかと寄り、猶予(ためら)わず剣(つるぎ)を抜き、颯(さっ)と目に翳(かざ)し、衝(つ)と引いて斜(ななめ)に構う。面(おもて)を見合す。)
美女:ああ、貴方。私を斬る、私を殺す、その、顔のお綺麗さ、気高さ、美しさ、目の清(すず)しさ、眉の勇ましさ。はじめて見ました、位の高さ、品の可(よ)さ。もう、故郷も何も忘れました。早く殺して。ああ、嬉しい。(莞爾(にっこり)する。)
公子:解け。

たったこれだけで、剣を突きつけられただけで、いきなり娘は心変わりするんです。別に命乞い目的とかじゃなくて。何なの今までの茶番なの?! なんでいきなり!? とツッコミたくなるんですが、そうとは言えど、初見のときから、なぜかこの部分がずっと心に残っていました。

でもねぇ、SMをやってみてわかったんだけど、それまでのことがすべてチャラになってしまって、相手にひれ伏す瞬間ってあるんですよね。こんなふうに本気で向き合って、むき出しになった感情が、むき出しになってなお洗練されていて美しかったときとか(見た目的な意味だけじゃないですよ)。まぁ他にもありますけど、何なんでしょうね、そういう瞬間は確実にある、とはわかったけど、いまだに言葉で説明するのは難しいや。
それは、SMの醍醐味のひとつでもあると思う。

そもそもなぜこの場面がこういう展開になるのかよく理解できないまま、それでも胸にやきついたのは、そういう一瞬のニオイが色濃くしたからだと思います。ニオイの正体がわかったのは、それから何年も何年も経った後でしたが。
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早川舞

Author:早川舞
 女王様と編集者の二足のわらじを経て、SM・フェティッシュ分野を得意とするライターに。別名義で環境、健康関係、和の文化や歴史についての記事や、ゲームシナリオ、ノベライズなども執筆する。ていうかわりと何でも書く。

 共著『可笑しなヘンタイ図鑑』(宝島社)、『Girl’s Side Book』『Girl’s Side Dictionary』(池田書店)、オタクが腐女子に、さらに女王様になるまでを描いた自伝『女王様はオタクだった 腐った遺伝子』(大洋図書・電子書籍)等の著作がある他、北尾トロ氏責任編集『季刊レポ』(ランブリン)にてSMの歴史や女装をテーマにした記事を寄稿。SM専門誌・ウェブサイトでも活動。

 メンバー全員女王様ロックバンド「SEXLESS」なんてのもやってたり。


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